皆さん、こんにちは。mitsukiです。
昨今「AI」や「機械学習」といったワードが世間を賑わしており、その可能性・将来性について色んな記事が出ています。
10年後には今ある仕事の半分がAIに取って代わられるという恐ろしい報告もあったりで、建築業界も決して他人事ではありません。
AIに仕事を奪われやすい職業は医師や弁護士・会計士などの士業からと言われていますが、では建築士はどうでしょうか。
改めて建築士の仕事を紐解いてみると、これはAIのカモにされるかもしれないと思いました。
私なりの意見を聞いてください。
AIとは
まずはAIについて説明します。
ひと口にAIと言っても人工知能・機械学習・ディープラーニングなど様々ですが、
ここでは「機械が自ら学習する」という点をキーワードにしたいと思います。
2015年の「アルファ碁」が有名な話ですね。
Googleが開発した囲碁プログラムが世界1位の囲碁棋士に勝利したというお話です。
アルファ碁は実際のプレイヤーや自分自身と対局を繰り返すことで囲碁を学習し実力を高めていきました。
そうして蓄えた実力をもとに世界1位の棋士にまで勝利し、最後には人間では思いも付かなかった数々の指し手を残して惜しまれながらも引退したそうです。
機械が自分自身で学ぶことで、特定の分野においては人間を上回ることを証明したケースですね。
設計とは
次に設計の仕事について説明します。
設計というのは無から有を作る作業。
機械なんかにできるわけがない!読む価値なし!
そう主張する方は少なからずいらっしゃるかと思います。
頭の凝り固まった建築業界なら特に。
しかし果たして本当にそうでしょうか?
建築士の仕事、つまりは設計の仕事の要素を紐解いてみると、
①土地の情報を聞き
②建築基準法と照らし合わせ
③外観・間取りを考える
大まかにこのような分類ができます。
個別に説明すると…
①土地情報について
法務局に行き地積測量図や公図から土地の情報を調べます。
大層な名前で身構えてしまいそうですが、誰でも入れます。
公図や測量図も数百円で購入できます。
②建築基準法について
書店で3000円ほどで購入されています。
建築物を建てる上での条件がすべて記載されています。
③計画について
いわゆる図面と呼ばれるものです。
CADソフトを使用して作図するのが一般的です。
建築士の腕の見せ所。
①②③をまとめるとこんな感じです!
建築士はお施主さんから①や予算の情報を聞き②建築基準法と照らし合わせ③プランを考えています。
AIがプランニングする時代
では考察に入ります。
①について
土地情報は現時点では人力で入力するしかありません。
公図に頼っていますからね。
しかし将来的にデータ整備が進んだときにの精度が向上したとき、同じことが言えるかどうか。
例えばGoogle Map。
2~3年に一度は社用車を走らせて情報を更新しているGoogle Mapと、登記された時点の情報から一切の更新がない公図(しかも紙ベース)とでは信憑性は雲泥の差です。
ましてや一般人でもドローンを飛ばせる時代です。
紙ベースの地積測量図が過去のものとなる日はそう遠くないでしょう。
話はそれましたが、もうおわかりのように①は現時点で既に建築士でなくても可能な仕事です。
今後の焦点は①が「自動化されるかどうか」という点に尽きるでしょう。
②について
「建築基準法を読める」ことは建築士という職能の肝となっている部分です。
建築士試験でも法規はかなりの比重を占めますし、この部分を深く知らない限りは「絵に描いた餅しか作れない自称建築家」という烙印を押され続けます。
従ってこの点をAIが負担するのは難しいかというと…
実はそうでもありません。
むしろ歓迎されるべき部分です。
まず大前提として、機械は条件が大好きです。
1つ例を挙げてみましょう。
例えば建築士が住宅を設計する場合、天井高はだいたい2.5m程度になります。
それは「木材の規格の都合」であったり「人間が程よく空間を感じられる寸法」だったり理由は様々あるかもしれませんが、最も大きな理由は「居室の高さは2.1m以上でなければならない」と建築基準法で定義しているからです。
つまり建築基準法において「居室の高さ」は重要な要素の1つと言えますね。
しかし仮にこの「居室の高さ」に関連する条文がなかったとしたらどうでしょう。
実際にはそんなことありえませんが、そのような場合でも「何だかんだ」で天井の高さは2.1m以上になると予想されます。
建築士、つまり人間は上に挙げたその他の要因を考慮して設計しているからです。
しかしAIにそんな芸当はできません。
人間における常識がわからないからです。
もっと言えば、人間の感覚や建材屋の都合なんて知ったこっちゃないからです。
そういったケース。
つまり実は建築士が暗黙の了解の内に設計していた場合、AIは混乱します。
現在の技術では明文化・定義化されていない事象には対応できないからです。
これを建築基準法は明確に線引きしてくれるので、機械にとっては心強い味方です。
建築基準法の存在がAIにとってプラスに働くのはこうした理由があります。
よって②はむしろAIによる設計を後押しします!
③について
そして建築士の核となる部分。
この点に関してAIは抜群の力を発揮します。
なぜなら機械は「存在し得るすべてのプランを弾き出すことが出来るから」です。
それも一瞬で。
例えば「果物を10種類思い浮かべてください。」
こう言われたとき、皆さんならどれくらい時間がかかるでしょうか。
30秒、10秒、1秒?
人間にとっては5秒でも十分速いのかもしれません。
しかし機械にとっては一瞬です。
それも10種類どころか地球上に存在する全ての果物の種類が即答できます。
さらにAIともなれば、その内から最善の一手を導き出してくれます。
その点をGoogleのアルファ碁が証明してくれました。
もちろん最初のうちは人間の常識とはかけ離れたトンチンカンな提案をしてくるでしょう。
しかしユーザーとの対話を繰り返しながら、ひいてはクラウドに接続して全世界の人間と対話を繰り返しデータを蓄積することで、AIは学んでいきます。
そして十分に人間の趣味・趣向を学習することで、段々と各々のユーザーのお気に召すプランが出され始めます。
このあたりはネット通販のレコメンド機能に似ていますね。
Amazonでお買い物をされている方ならよくご存知かと思います。
そしてプランが出揃った時点でフィルタ機能の金額ソートをかければ「お気に入り」かつ「最安値」のプランが弾き出されます。
最安値に関しては言い過ぎかもしれませんが、システムに建材ごとの単価を設定しておけば十分実現可能です。
計画数量ではなく実際に消費する所要数量を建材ごとに予め定めておけば、工事金額もかなり正確になります。
職人手間に関しても延べ床面積や㎡数から拾い出せば、実際の金額に近いものが出せるでしょう。
これでプラン・見積もり共に完成です。
あとは完成したプランと見積もりを片手に近所の工務店にお願いすれば、夢のマイホームの完成です。
打ち合わせ回数が増えることで文句を言う営業も、設計料をふんだくる建築士もいません。
こんな未来はいかがでしょうか?
現状の課題
さて、ここまで書いたところで現時点ではその土俵にも立てないことに気付きます。
それは業界のほとんどが紙の図面を使用しているからです。
今でこそBIMの有用性が広がり始めましたが、大半の事務所や工務店は二次元ベースのCADソフトを使用しています。
これまでも散々述べてきましたが、CADと言いながらもその実やっていることは「機械で絵を書いている」にすぎないのです。
太い線、細い線、一点鎖線…アホらしい。
本当の意味で図面をデータ化しない限りはAIの力を借りることなど到底叶いません。
まとめ
考察は以上になります。
書いている最中も極論だな~と思いつつも意外と実現可能かも?と思ったりしてます。
確かに全くの無から有を作ることはAIにも難しいかもしれません。
しかし建築士の多くは知ってか知らずか多くの制約の中で仕事をしてします。
それは建築基準法であったり、土地の大きさだったり、建材の規格だったり。
木造であれば910mmの尺モジュールの中で設計することが大半だと思います。
(一部の大御所先生を除けば。)
その制約下であればAIでも十分設計が可能ではないかと考えたのが、このような記事を書こうと思ったきっかけです。自分で自分の首を締めていますけどね。
もちろん、誰でも仕事を失うことは怖いです。
しかし「建築士が設計すること」と「お施主様にとって良い暮らしを実現すること」。
これは必要十分な関係ではありません。
AIがプランを考えても施主が満足すれば結果オーライではないでしょうか。
それでコストが抑えられるなら尚良しです。
あくまで自分が設計することにこだわり続ける建築士はいずれ淘汰されていく運命なのかもしれません。
今後は過去の判例や知識量を問う分野はAIに任せて、人間は人間にしか出来ない部分を鍛えていくことが生き残りの鍵になるかと思います。
おわりに
いつもご覧になっていだたきありがとうございます。
お気づきの方もいたかもしれませんが、色付きや強調表現の文章をやめてみました!
読者の方から苦情があったので。悲しいことですが。
確かにスマホでは見づらいのかも知れませんね。
自分では良かれと思ってやっていたことが、実は相手にはとっては迷惑だったりすること…よくあると思います。
それでは。