皆さん、こんにちは。mitsukiです。
壁について考えてみましょう。
普段から飽きるほど目にしている壁なのに、私たちはそのすべてを知りません。
ためしに壁に目をやって、じっくり見て下さい。
目に穴があくほど。
壁の表面がクロスなのか、塗り壁なのか、木材なのか…
色は、汚れは、質感は…
さらに目を凝らすと、床との間に「なにか」ありませんか?
細ながーい「なにか」が…
そう、彼の名は「巾木」と言います。
今回は巾木についてまとめました。
巾木とは
巾木とは床と壁の境界にある細長く薄っぺらい材料を指します。
壁に沿って帯状に走っているもので、床材と壁材の見切り材として取り付けます。
材質は木材もしくは塩化ビニールで出来ており、前者を「木巾木」、後者を「ソフト巾木」と言います。
使い分けは床材がフローリングなどの木材の場合は「木巾木」、クッションフロアやフロアタイルのようなビニル系の場合は「ソフト巾木」という具合です。
施工に関しては「木巾木」は大工さんが取り付けます。
木だから当然ですね。
逆に「ソフト巾木」はクロスやクッションフロアを手がける内装屋さんが請け負います。
と呪文のように説明してみましたが、巾木。
そもそも何のために付けるのでしょうか。
巾木の役割
壁の中身は石膏ボード(PB)と呼ばれる面材が下地になります。
この石膏ボードを大工さんは現場で石膏まみれになりながら切り貼りし、壁の下地を作っています。
そんな中で巾木をつけることでどのようなメリットがあるのでしょう?
巾木の役割。
それは「見切り」と「壁の保護」です。
問題となるのは床フローリングと石膏ボードの取り合いの部分です。
見切り
仮に巾木(一般的な出巾木とします)を付けるのであれば問題はありません。
大工さんは施工精度を求められずバシバシと石膏ボードを貼ることができます。
なぜバシバシ貼っても良いのか。
それはたとえ不揃いだとしても最終的には巾木が隠してくれるからです。
逆に巾木を設けない場合、大工さんは苦労します。
それはフローリングと壁の間をギリギリまで狭めなければならないからです。
その精度は1mm単位で求められます。
それ以上隙間があるとまず目に付きますし、クロスも剥がれやすくなります。
大工さんにとってはこの手間が非常に厄介。
もちろん木材加工の技術で生計を立てている大工さんにとって、やってやれないことはありません。
しかし時間がかかる。
大工さんの時間がかかるということはイコールお金がかかるということです。
かかったお金はすべてお施主さんに跳ね返ります。
壁の保護
もう1つの役割は壁の保護です。
よく言われる話は「掃除機が壁に当たりますよ」というもの。
確かに掃除機が壁に当たらないよう丁寧にかけている人はなかなか見かけませんね。
多少なりとも掃除機は壁にぶつかってしまいます。
ましてや近年では自動お掃除ロボが活躍しています。
掃除機が壁に当たることはもはや宿命なのです!
そんなとき壁に巾木があるかないかで未来は大きく変わります。
巾木があれば掃除機とクロス(仕上材)が直接ぶつかり合うことはなく、緩衝材の役割を果たしてくれます。
モノが直接当たることがないのでクロスが捲れる心配はグッと少なくなりますね。
そして竣工から十数年が経ったのち…
片や変わりなく健在な壁、片や端部のクロス剥がれ and 凹んでいる壁。
皆さんはどちらが良いと思いますか?
建築家(笑)から忌み嫌われる巾木
さて、巾木がなければならない理由は十分に伝わったかと思います。
しかし建築家と呼ばれる先生方は巾木が嫌いなようです。
大きな理由としては「線が1本増える」から。
本来壁と床は1本の線で完結します。
しかし巾木という要素がさらに加わると余計な線が増えます。
「はっかけ納まり」の記事でも書きましたが、本来1本の線で事足りる所に2本,3本と追加していくことは「スッキリ見せる」という点においては足かせになるんですね。
シンプル設計が売りのミニマリスト的な建築家はこの点が耐えられないようです。
しかし大工さんの施工手間とか、求める施工精度とか。
巾木という一本の線を消すために乗り越えなければならないハードルは多いです。
また仮に実現したとしても実際に使い勝手が良くなることはまずありません。
それらを天秤にかけて判断することはあくまでお施主さんの権利です。
壁に対するよっぽどのこだわり、潤沢な予算、大工指示の徹底。
個人的にはこの三拍子が揃ってはじめて検討すれば良いと思います。
迷ったらとりあえず付けましょう。巾木。
巾木を無くす方法はないのか
ここまで来たらいっその事、巾木をなくす方法を考えたいと思います。
なくすことはデメリットだらけですが、目立たなくする方法なら…あるいは…
ある!
細かい説明は省略しますが、既存の方法では「入巾木」、いま流行りの方法では細い「アルミ巾木」と呼ばれるものがあります。
どちらもお金はかかりますが、大工さんによっては珍しくてむしろ歓迎されるかもしれません。
壁をスッキリ見せることにこだわりがあるならば、まずはこの方法を第一に検討してみてはいかがでしょうか。
おわりに
いつもご覧になっていだたきありがとうございます。
軒のない家とか、リビングに土間とか。
オシャレさや先進性を求めすぎて実際に住みづらくなっている家が出てきているような気がします。
ハウスメーカーなどの標準仕様はノーマルでつまらないと感じる部分も多いかもしれません。
既製品も物足りなくなる点もあるでしょう。
しかしそれらの仕様も長年の蓄積から標準仕様となった経緯があり、良く言えば洗練されているわけです。
それをつまらないとバッサリ切り捨ててしまうのはやはり危険。
ポッと出のひとりの建築家の個人のセンスだけで捻じ曲げるべきではないと思います。
奇をてらった家も一週間もすれば慣れます。
慣れた後に残るのは実際の住み心地です。
さらに30年もすれば売却の帰路に立たされるかもしれません。
万人が使えない建物というだけで査定価格は下ります。
個人設計事務所に頼む方はそのへん慎重に考えましょう。
なんでこんなこと書いたかというと、ドリームハウスの再放送を見たからなんですけどね。笑
それでは!